ドラフター

今から40年ほど前の話、当時 設計の主流はドラフターを使って、1本1本 線をひいて図面を作りあげていく伝統的な方法から、CAD、CAM、CAEと呼ばれるコンピューターを使った新しい設計手法にかわる過渡期でした。

航空機や造船、宇宙分野など、先進産業ではコンピューターを駆使した開発が効果を発揮していて、その流れが自動車産業にも波及し始めた時期

CADDS4X自分の所属した設計部隊でも、社運をかけて何億円もするコンピューターシステムが数台導入され、若い世代の自分たちがその操作を担う立場となりました。

学生時代から慣れ親しんだ製図から、コンピューターを駆使して3次元のワイヤーフレームでモデリングしていく手法は斬新。

2次元の三面図を頭の中で立体形状にイメージしていく方法から、コンピューター内に実際の立体形状を作りあげていく方法、XYZ軸を意識して、3次元的思考に切り替えるのに、慣れるまで戸惑った記憶があります。苦労してCADシステムの操作を覚えた自分は、いつの間にかその分野では社内の第一人者になっていました。

そうこうしているうちに、設計の電算化を更に推し進めようという流れになり、自分は設計の第一線から離れ、自社設計の特性に合うようにコンピューターシステムを改良したり、システム管理などを受け持つ仕事に配置転換。

設計が天性の仕事と思っていた自分にとって、ショックな出来事でしたが、望まぬ仕事であっても自分のベストを尽くそう、そう思い直しました。

ふだんは仕事に打ち込みつつ、オフタイムは峠を走りまわったり、ジムカーナにエントリーして腕を磨いたりしているうち、愛車を自分でいじるようになり、クルマ生活にどっぷりはまっていきました。

クルマいじりの趣味が昂じて、仲間のクルマなども手がけるようになり、口コミが広がって、のちにガレージHRSを立ち上げるまでになるのですが、それはまた別なお話。

最初はワイヤーフレーム主体だったモデリングも、サーフェスモデルやソリッドモデルに進化していき、構造解析に利用したり、設計で作ったモデルを製造部門に渡して、治具や型の制作にも使うようになっていきました。

紙の図面では手間のかかった干渉チェックや部品の組み立てシミュレーション、強度計算や切削加工のツールパス生成、ありとあらゆることがコンピューター内のバーチャルで完結できるようになり、余分な試作もどんどん削減されて、クルマの開発期間も相当短縮できるようになりました。

今では笑い話ですが、電算化が始まった頃、これからはオンライン通信でデータをやり取りしようってことで、東京の本社電算部門から追浜の設計部門へデータ転送テストをしたことがあります。

まだインターネットもない時代、専用の電話回線でモデムを使って、FAX送信と同じ原理でデータを送ってみたところ、ひと晩過ぎても、まる2日かかっても通信が終わらず、3日目に突入したところで通信エラーになって失敗。

新時代の技術って言ったって、こんなでは磁気テープに書き込んて、社内便で送ったほうが早いし確実だなんて、アナログ的な時代もあったのです。構想は素晴らしくても、まだ技術が追いついてなかったのでしょうね。

僕がサラリーマンを辞めて、HRSを立ち上げた1999年頃にはシステムもかなり進化して、自動車メーカーもソリッドモデルでのデザインが実用的レベルになりつつあり、仕事も進め方も伝統的な昔ながらの方法から、ここ十数年で企画していたことが現実のものになっていくのを感じていました。

技術革新! まさにこの40年間はそれまでとは別次元のスピードで、進化していった時代だったと思います。机上の空論だったアイデアも今では実用化され、3Dプリンターで製品を生み出すことが可能になっています。

これからも新しい手法がどんどん編み出され、自動車開発の現場は進化していくと思いますが、歳を重ねた自分にはついていけなくなる時代も来るでしょう。

世の中はとんでもないスピードで変化しています。僕の生きてきた時代は内燃機関のクルマが主流でしたが、電気自動車や自動運転車、未来の夢と言われていたことがどんどん現実のものになってきています。

何十年後にどうなっているか、正直 自分には想像もつきません。願わくば、時代がかわってもCarLifeを楽しむという文化が残っていて欲しいと思います。